2022.08.10
医療の知恵
医療の知恵~病理診断報告書は誰のためのものでしょうか
腫瘍性疾患の確実な診断のためには細胞の観察が必要です。腫瘍の診断(有無・良悪・種類・進行度)が必要となれば病理診断の出番です。
検体採取や手術をおこなった主治医が治療方針を決めるためには、病理診断報告書を読む必要があります。主治医は病理診断の内容を分かりやすく患者さんに説明していますが、「癌」や「良性」ということ以上に詳しい内容はなかなか頭に入らないかもしれません。病理診断は第一に「患者さんのためのもの」ですから、もどかしく思っております。
腫瘍の病理診断報告書にはアルファベットの様々な略号が出現するため、その説明を聞くと一層難解に感じられることでしょう。手術された臓器に対しては、「深達度」「ステージ」などを記載するために、「癌取扱い規約」などで定められた略号が用いられます。各臓器の「癌を疑う病変」「境界病変」「早期癌」などに対し、概念の統一を図るため、あえて馴染みのある旧来の用語ではなく、新しい用語を作成しているとも聞きます。「診療情報管理士」がデータベースにまとめたり、「がん保険」で保険金の額を決めたりするために、書類だけでなくデジタル化された情報も必要です。
病理診断報告書の様式が病院間で統一できていない課題がありますが、他の病院の先生方にも正確に伝わる報告書を書くことが鉄則です。診断文の全てに説明責任を負うつもりで書いております。
病理診断科副部長 坂谷暁夫