2019.03.27
医療の知恵
非アルコール性脂肪肝炎
第47回「医療の知恵」では,「非アルコール性脂肪肝炎」を取り上げます。
肝臓内に中性脂肪の貯まった状態を「脂肪肝」といいます。(図1)
以前から、アルコールによって肝臓が脂肪肝になることは知られていましたが、時代とともに生活習慣が変容してきたことで、アルコールをほとんど飲まない人に起こる脂肪肝の割合が増加してきました。飲酒量基準はエタノール換算で1日20g未満に相当します。(表1)
「非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)」は脂肪肝を認め、かつ、他の肝疾患を除外した病態です。
当院では、腹部エコー検査を年間約8,000件、人間ドックも含めると約14,000件に施行しています。いずれにおいても、エコーで脂肪肝を約30%認めました。国内の大規模調査でも、NAFLDの有病率は約30%と報告されており、罹患率の高い疾患です。
NAFLDの中でも、肝臓内で持続的な炎症を起こし、肝硬変や肝癌へと進行する可能性のある「非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH(ナッシュ))」が存在します。肝臓の病気だけでなく、心血管疾患や他の臓器の癌などにも罹患するリスクが高くなりますので、適切な診断と治療が必要です。内服薬や食事運動療法などの外来治療が基本的な治療方針になります。
血液検査や画像検査だけでは、いわゆる「脂肪肝」と「NASH」を区別することは難しいので、肝機能障害と脂肪肝を何度も指摘されたことがある方は、是非一度、専門医にご相談ください。
第二消化器内科 副部長 森奈美