2020.01.29
医療の知恵
喫煙と肺癌の関係
タバコを吸うと肺癌に罹患するリスクが高まると考えられており、男性は4.8倍、女性は3.9倍に増加すると言われています。喫煙年数や喫煙本数が多いほど肺癌発症のリスクが高くなり、禁煙を続けるとリスクは徐々に低下していきます。日本における成人喫煙者数の割合は、1966年のピーク83.7%から、2010年には19.5%まで減少しています(図1)。一方で、日本における肺癌の罹患数および死亡者数は依然、増加を認めています(図2)。2019年の肺癌罹患者数は約122000人、死亡患者数は約76000人と予測されています。早くから禁煙対策を講じていた米国や英国では肺癌の罹患数が減少傾向に転じており、将来的には、日本も減少に転じると思われます。
また、喫煙は肺癌に罹患した際の治療にも悪影響を与えます。当院で外科治療を受けられる患者においても、長期間の喫煙による低肺機能や、心血管系に併存疾患を抱える患者もみられ、治療に難渋する方も存在します。特に、喫煙を継続したままの肺切除は有意に呼吸器合併症が増加すると考えられており、当院では手術が決定した場合は禁煙期間を最低1か月以上設けたうえで、手術を受けていただいています。
喫煙は手術後の再発や、治療後の予後にも悪影響を与えるとの報告がありますので、肺癌に罹患したくない喫煙者の方、肺癌の治療をこれから受けられる喫煙者の方は、禁煙が肺癌の予防および治療の第一歩と考え、速やかに禁煙していただくことをお勧めいたします。
第二外科 副部長 竹中朋祐