2020.09.25
医療の知恵
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査(NIPT)について
最近マスコミでも話題となっている新しい検査について紹介します。
従来、胎児の遺伝学的検査(染色体検査など)を行うためには羊水細胞や胎盤の絨毛細胞・胎児の血液細胞などが必要でした。これらのサンプルを得るためには羊水穿刺などの侵襲的な方法を必要とします。
1997年盧 煜明(Dennis Yuk-ming Lo)らによって母体血漿中に胎児DNAが微量に循環していることが発見されました。この胎児DNAを次世代シークエンサーで解析し染色体断片数をカウントすることにより染色体が正常な場合と異常な場合を区別することが可能となりました。
この検査はNIPTと呼ばれていますが2011年から米国で臨床導入され日本では2013年から開始されました。羊水検査と違い、妊婦さんからの採血で検査をいたしますので、赤ちゃんへのリスクがありません。高年妊娠や染色体疾患のお子さんを妊娠・出産した経験がある方、超音波検査や母体血清マーカー検査で、胎児が染色体疾患の可能性が高いと指摘されている方等が検査対象となります。
本検査は専門的な遺伝カウンセリングが可能な施設のみで実施されることとなっており、広島県内では広島赤十字・原爆病院と広島大学病院での2施設で行われています。当院では臨床遺伝専門医3名で対応しています。
NIPTをご希望される方には,原則ご夫婦で遺伝カウンセリング外来を受診していただき、検査内容を十分ご理解いただいたうえで検査を実施することにしております。
産婦人科 遺伝診療室長 三春範夫