日本赤十字社 広島赤十字・原爆病院

病院公式ブログ

2020.12.08

医療の知恵

「受動喫煙」よもやま話

たばこの煙には約5000種類の化学物質が含まれており、そのうち70種類が発がん物質です。喫煙者が吸うたばこの煙(主流煙)の中の化学物質は、たばこの燃焼部分から出る煙(副流煙)や喫煙者が吐き出す煙(呼出煙)の中にも存在しています。副流煙はフィルターを通しておらず、主流煙よりも多くの有害物質を含んでいます(図参照)。

喫煙者本人以外がたばこの煙(副流煙+呼出煙)にさらされることを「受動喫煙」と呼びます。

受動喫煙はたばこを吸わない人の肺がんの原因のひとつであり、受動喫煙による日本人の肺がん発生リスクは受動喫煙がない人に比べて約1.3倍増加します。これまで喫煙歴が無いにも関わらず、扁平上皮癌(たばこが原因の肺がん)になった患者さんを時々経験しますが、多くの場合、配偶者がヘビースモーカーです。

受動喫煙と関連する疾患として知られているのは、肺がんの他に、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群です。厚生労働省の発表によると、受動喫煙によるこれら4疾患の推計死亡者数は年間1万5000人にのぼるとされています。

近年、非燃焼・加熱式たばこや電子たばこといった新型たばこが普及し、「受動喫煙の危険がない」「従来のたばこよりも健康被害がない」という風潮もあります。実はこれらの考え方は、科学的根拠の無い誤った認識であり、日本呼吸器学会も警鐘を鳴らしています。

こういう私もかつて喫煙者でしたが現在は吸っていません。医療者としては、「たばこは百害あって一利なし」と言い続けるほかありません。

呼吸器外科室長  米谷卓郎

このページのトップへ