2021.04.26
医療の知恵
慢性膵炎について
慢性膵炎とは、膵臓の慢性炎症に伴い膵実質の線維化および膵石などが生じる病態です。
多くは非可逆的であり、腹痛・背部痛を伴い、進行すると膵外分泌機能・内分泌機能が低下します。原因としてはアルコール性と非アルコール性(原因不明・遺伝性・家族性)に分類されます。自己免疫性膵炎および閉塞性膵炎は治療により膵機能の改善が見込まれます。
慢性膵炎の診断は①膵石あるいは石灰化②膵管の不規則な拡張や膵萎縮③血中・尿中膵酵素の異常などが挙げられます。慢性膵炎は膵臓癌の危険因子としても知られており、膵機能を温存するためにも、早期診断および早期治療が必要となります。当院では膵石に伴う閉塞性膵炎を来していれば、体外的に膵石に衝撃波を与えて砕石術あるいは膵石の破砕具で内視鏡的に砕石術を行います。アルコールが原因であれば断酒が必要となります。内服薬としては膵酵素阻害剤や消化酵素薬などがあります。
食事は脂肪制限食が必要となるため栄養障害・体重減少を起こす危険があります。
当院では管理栄養士による栄養指導を受けていただくこともできます。
慢性膵炎が進行すると、脂肪便・脂溶性ビタミンの不足・糖尿病を引き起こす可能性があります。下記の図は慢性膵炎の進行と臨床症状および膵の状態について示しています。
もし、心窩部痛・背部痛・体重減少・軟便等の症状があれば、慢性膵炎の可能性もあるので早めに専門機関を受診するようにして下さい。
第一消化器内科 副部長 岡崎彰仁