日本赤十字社 広島赤十字・原爆病院

病院公式ブログ

2024.06.28

医療の知恵

アルツハイマー病の新薬について

昨年アルツハイマー病の新薬が発売されたニュースが出たのをご存知でしょうか?
現在、日本は高齢化に伴い認知症の患者数は飛躍的に増加していますが、アルツハイマー病は認知症の原因として最も多い病気です。アルツハイマー病は脳にアミロイドβ(Aβ)と呼ばれる蛋白質が異常に蓄積することが原因と考えられています。Aβができなくする、または脳内に貯まったAβを取り除くことで病気を治せると考えられ、これまで世界中でAβに対するワクチンや抗体治療の研究が数多く行われてきました。しかし、これまでの研究は効果が証明できない、または副作用のため、いずれもうまくいきませんでした。
昨年初めて、長い開発の経緯の末にAβに対する抗体薬が日本で承認されました。その薬、レケンビはAβがかたまりになる途中の物質(プロトフィブリル)にくっつくことで、異物を排除する細胞のミクログリアを引き寄せ、Aβを取り除きます。その結果、脳のAβが減り、アルツハイマー病の進行が遅くなることが期待されています。レケンビは「アルツハイマー病による軽度認知障害」と「アルツハイマー病による軽度の認知症」に対する薬です。このため、認知症が進行してしまうと適応外となってしまいます。また、PET検査や脳脊髄液検査で脳内にAβが蓄積していることが確認された方が適応となります。

当院では初回の投与は入院で行い、その後は2週間ごとに通院していただき、点滴で投与します。副作用としては点滴に伴う反応(頭痛、悪寒、発熱)や、脳のむくみ、脳の出血が起きることがあるため、投与開始後、定期的にMRI検査を受ける必要があります。また、自己負担額がある程度かかることにも注意が必要です。
投与を希望する方はかかりつけの先生から紹介状をもらって、当院の物忘れ外来を受診していただければと思います。

脳神経内科部長 雜賀 徹

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