日本赤十字社 広島赤十字・原爆病院

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2023.08.10

その他

大人の社会見学 「液化酸素」

当院であまり知られていない場所を見学し、紹介するコーナー「大人の社会見学」です。今回は、広報委員である【緩和ケア科 吉川 徹先生】が、「液化酸素」についてレポートします。
皆さん、こんにちは、日赤特派員の吉川です。今回は、酸素はどこから来るのか!?を取材してきました。

施設課から説明を受ける日赤特派員の吉川先生

まず、酸素は外部から補給されています。そのため、貯蔵用のタンクがあるのですが、場所は立体駐車場のお隣になります。病院からは立体駐車場の向こう側になるので影になって見えませんが、自転車で通勤している方はよく見ていると思います。表面に液化酸素と書かれた白い大きなタンクです。

液体酸素のタンク

この中にキンキンに冷やされて液化した酸素が入っています。タンクの最大容量は9,700㎥ですが、大体8割ほどで運用されていて、7,300㎥の液化酸素を入れています。とても大きな数字でイメージがつきにくいと思いますが、ヒトでいうと112,000人分くらいの容積です、すごく大きいですね。さらに液化酸素1Lから気体酸素850Lほどになるので、タンクから気体酸素6,205,000Lになります。これは、61人に常時酸素10Lを1週間供給できる量になります。

福山市から来た巨大タンクローリー

大切な患者さん用の酸素は、停電になったら?と心配になるかもしれませんが、ご安心を。酸素タンク内の圧力を利用して、タンクから病院に酸素を供給しているので、停電になっても酸素は送られます。
では、次にこの膨大な酸素の供給はどこからされるのでしょうか?病院内にある木々から光合成でできた酸素を集めているのでしょうか?当然そのようなことはしていません。酸素は、近隣だと山口県と福山市で製造していて、そこから運搬し、広島市のタンクに貯蔵しているそうです。今回は、福山市から巨大なタンクローリーで運搬されてきました。

なぜ、そんな遠くから運搬してくるのかというと、酸素を生成する機械がそこにあるからです。山口県には化学コンビナートがあり、福山市には製鉄所があります。そこで大量の酸素を使用するために液化酸素を生成しており、我々はそのおこぼれに預かっているわけです。

タンクローリーと日赤特派員の吉川先生

さて、それでは酸素を作るのはどのようにしているのでしょうか。理科で習ったオキシドールから?光合成?海の水を電離するのか?答えは、「空気を冷却させて」です。空気中にはおよそ80%の窒素、20%の酸素が含まれます。そして、酸素の液化する温度は-183℃、それに対して窒素は-195℃。この差を利用して、液化酸素を生成しているわけです。ただ、冷やすためには電気が必要になりますから、電気料金の上昇している昨今、酸素代もそれに伴い上昇しているそうです。私たちはもっと電気と酸素のありがたみを感じながら使用したいものです。

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